人事・労務ニュース

文書作成日:2024/02/06

給与計算をする際に押さえておきたい端数処理の実務

 給与計算をしていると、労働時間や円未満の賃金額の端数が出ることがあります。今回はこうした端数処理について、法律に沿った扱いがどのようなものであるかを確認しましょう。

[1]労働時間の端数処理
 給与計算をする際には、まず労働時間を集計することになりますが、労働時間は1分単位で集計し、賃金を支払うことが大原則となっています。そのため、所定労働時間、時間外労働時間、深夜労働時間、休日労働時間の各々を1分単位で集計する必要があります。
 その際、1ヶ月における時間外労働・深夜労働・休日労働の各々の合計については、端数処理をすることが認められています。具体的には、合計時間について1時間未満の端数がある場合には、30分未満を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げても差し支えないとされています。

[2]割増賃金の端数処理
 割増賃金を計算する際に端数処理については、1時間あたりの賃金額を計算した際に端数処理をすることが認められており、その際には50銭未満の端数を切り捨て、50銭以上を切り上げることとなります。具体的には以下のとおりです。

【例】
1ヶ月の所定賃金額:230,000円 1ヶ月の(平均)所定労働時間数:168時間の場合
1時間あたりの賃金額=230,000÷168時間=1,369.0476…
→50銭未満の端数の切り捨てを行うと、1時間あたりの賃金額:1,369円

 この取扱いは1ヶ月における時間外労働・深夜労働・休日労働の各々の割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合も同様となります。

[3]賃金支払時の端数処理
 賃金の支払いについては、従業員の指定する銀行口座への振込みが多いため、賃金支払時に端数処理を行うことは稀かと思われますが、1ヶ月の賃金支払額における端数処理についても一定の範囲内で認められています。
 具体的には、1ヶ月の賃金支払額に100円未満の端数が生じた場合に、50円未満の端数を切り捨て、それ以上を切り上げて支払うことが認められています。また、1ヶ月の賃金支払額に生じた1,000円未満の端数を翌月の賃金支払日に繰り越すことも認められています。なお、この取扱いをするためには賃金規程にその旨の定めが必要です。

 端数処理について、すべて切り捨てるなどという誤った取扱いをしていないか、この機会に確認しましょう。お困りごと等ございましたら、当事務所までお問合せください。

■参考リンク
東京労働局「3.残業手当等の端数処理はどうしたらよいか

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。