人事・労務ニュース

文書作成日:2024/05/21

在宅勤務手当と割増賃金の算定基礎等の整理

 新型コロナウイルス感染症の感染防止のために、在宅勤務を導入する企業が増加しましたが、5類移行後は、在宅勤務を廃止し、従業員に出社を求める企業もあるようです。今後、仕事と育児・介護との両立の観点から在宅勤務の活用が求められています。そこで今回は、在宅勤務者へ支給する「在宅勤務手当」の割増賃金に関する取扱いが整理されたため、関連事項も含めまとめます。

[1]社会保険の取扱い
 在宅勤務手当は、日本年金機構の「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」の中で、社会保険の報酬や賞与(以下、「報酬等」という)に該当するか否かは、在宅勤務手当が実費弁償に当たるか否かによって、基本的に以下の判断基準で考えることになります。なお、支給要件や支給実態などを踏まえて個別に判断する必要があります。

  • 在宅勤務者に毎月5,000円を渡し切りで支給するように、従業員が在宅勤務に通常必要な費用として使用しなかった場合でも、その金銭を会社に返還する必要がないものであれば、労働の対償として支払われる性質があるとして報酬等に含まれる。
  • 業務に使用するパソコンの購入や通信に要する費用を会社が従業員に支払うような場合、その手当が業務遂行に必要な費用にかかる実費分に対応するものと認められるのであれば、実費弁償に当たるものとして、報酬等に含まれない。

[2]割増賃金の取扱い
 割増賃金の基礎となる賃金(以下、「割増算定基礎賃金」という)には、家族手当、通勤手当、別居手当等の7つの除外賃金が定められており、除外賃金以外の賃金は割増算定基礎賃金に算入する必要があります。
 在宅勤務手当はこれまで除外賃金に含まれていませんでしたが、厚生労働省は「割増賃金の算定におけるいわゆる在宅勤務手当の取扱いについて」(令和6年4月5日基発0405第6号)を発出し、在宅勤務手当が事業経営のために必要な実費を弁償するものとして支給されていると整理される場合には、労働基準法上の「賃金」には該当せず、割増算定基礎賃金への算入は不要と示しました。

[3]所得税の取扱い
 所得税については、国税庁から「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」が公開されており、その中で「在宅勤務に通常必要な費用について、その費用の実費相当額を精算する方法により、企業が従業員に対して支給する一定の金銭については、従業員に対する給与として課税する必要はありません」と示されています。

 これまで割増算定基礎賃金として算入してきた在宅勤務手当を、割増算定基礎賃金から除外するときは、割増賃金額の減少につながり、労働条件の不利益変更に当たると考えられます。そのため、労使で十分な議論を行った上で見直しを進めることが求められます。

■参考リンク
日本年金機構「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集
厚生労働省「割増賃金の算定におけるいわゆる在宅勤務手当の取扱いについて
国税庁「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。




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